Openness

2011年2月13日 感想文。
イギリスの文化なんとか機関である所のBritish Councilが開催したイベント、Digital Creative Conference (http://bc-dcc.tumblr.com/)二日目の最終セッションに行ってきました。「アート」と大括りしてる割には中身はメディアアートの人が出てきて色々喋るってイベントだったのが…まぁでも社会と密接にかかわっているって意味ではアートの中で一番技術の進歩とかによって脅威にさらされやすいわけで、その代表という意味ではわかるんだけど。

 僕が出席したこのパネルは非常に興味深かった。彼らは"Openness"をキーワードにアートが「外」に出て行くことによって社会と溶け合ってアートとしてのアイデンティティを失っていくこととか「これはアートなのか、技術なのか」みたいな、なんか外からのまなざしを気にしている(悪い意味じゃなくて)ような印象をすごく受けて、それが新しいなぁと思ったんですわ。
 んで、質問したかったけどできなかったから自分の印象での独断だけど、多分登壇者にも質問してた人たちの頭にもクラシック音楽…じゃなくてもいわゆる伝統的な芸術(絵描きとか彫刻とか、例えば伝統芸能とか)、つまりデジタルやテクノロジーをディストリビューションにしか使わない/使えない人(作品の中にはあまり入ってこない人ってニュアンスかな)にあるような一子相伝、神秘のヴェールに包まれた「アーティスト様」というような芸術家像がないんだろうなぁ、というのが興味深かった。それは彼らにとって時代遅れな、「昔の芸術家」なのかな?それとも今日がデジタルについて語る場だったからあえてそういったものをトピックにあげなかったのか。

 で、まぁこんな場で答えが出るわけがないんだけど、僕がすごく気になってたのは芸術家にとってのオーラというのがダイレクトかつリアルタイムなコミュニケーションが可能になってしまった現代においてさらに消えていくことについてどう思うか、ということ。芸術作品のオーラはベンヤミンの時代に複製可能性によってもう消えていたのかもしれないけれど、それを生み出す存在の芸術家のオーラまでもが奪い去られようとしているような気がしていて、それはある種のつまり「オーラをまとわないこと」を表現の軸にするような、そういうものへのアンチテーゼとしての芸術にとっては歓迎すべきことなのかもしれないけれど、大概のアートは例えば異常な犯罪が異常者によって引き起こされるべき(といって逮捕された容疑者に異常な物語があとからあとから追加されていくように)である、というものと似て、人ならぬ人によって生み出されなければいけないものだと思うのよね。
 才能か、努力か、または振る舞いか。何かが異常(常人を超えている、という意味でね)でなければならない。そして人間くさくあってはならない。プラスでなくてはならないし、マイナスであってはならない。自分たちと同じものを食べ、同じ映画を見て笑い、同じ事で涙する人間の生み出す作品が自分たちのものと違うなんてこと、信じられないでしょう。そしてそうであるならば、接触を増やすにつれて芸術家は自分がいかに常人と違うかってことを表現し続けなければならなくなる。今までは接触がなく、ヴェールに包まれていたおかげで受け取る側が勝手に神話を妄想してくれていたのに、自分から進んでそれを生産しなければならなくなる。狂ったフリをするのはめんどくさいよ?
 それってなんかとってもアーティストにとって負荷がある話だと思うんだよね。感受性は普通で技術だけ突出してるって芸術家はもしかしたら存在しないのかもしれないけど。

 まぁこの話はきりがないのでこの辺として(もーーしかしたら追記するかもだけど)、心に残ったのは登壇者のひとり、斉藤精一さんが言っていた「Artは問題提起、Commercialは問題解決」という言葉。これも僕らがいるようなクラシックであるとか伝統芸能の世界全否定というか多分視野に入ってないんだろうなーって思ったんだけどそれをおいておくと、この定義はとても使いやすいなと思います。大枠をとらえているし、本当に使いやすい。二分論だけにやっぱり乱暴ではあると思うけど、それでもなんかそういう方向を志向すればいいのかな、って思える。

 我々も結構いつも「社会に影響を与える」ってのを標榜してるんだけど、実際には少なくとも普段は社会とのエッジにいるわけじゃなく所詮娯楽産業なわけ。でこの人たちは逆に常にそうやって社会と自分とか自分の芸術、て意識でいるのが面白いなって、そういう対比でもあったのかもしれません。

 あとはなんだろ、途中で会場に質問を求めたりして何人か発言してたけど、名乗らなくても登壇者がほぼ全員を認識してたってのがなんつーか世界せますぎ…っていう。まぁ元森美術館のキュレータとかが長々喋ってたりして、ある意味で会場からの質問にしちゃあ豪華だったとは思うんだけど…いやでもこれ日本人だからなのかよくわからないけど、こういう場での発言が下手。意見言ってるんだか質問してるんだかわからない。日本語って言葉の問題?あれを拾って答えてるパネルはすごいなーって思った。せめて自分の発言の最後にまとめというか、「要するに1~、2~、3~について答えてほしい」とかそういうのをつければいいのに…とか思いました。


 ま、もう少し時間がほしかったです。すごい深いテーマだったと思うからいつまでやってもひょっとしたら時間はたりないのかもしれないけどね。

あーちなみに飲み始めながら書いてました。なんか鬱っぽくなってたので酒逃げ。

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